音楽の贈り物

コロナウィルスが蔓延し、様々な規制の中、音楽会も例外に洩れず次々と中止や延期のお知らせが届く...。
そんな中、昨夜開催されたRegalino della Musica ー音楽の小さな贈り物ー『親愛なるドヴォルザーク』へ伺いました。

ヴァイオリニストの鈴木葉子さんとは15 年前に企画開催された、美術展を記念してのヴァイオリンコンサートの楽曲依頼を通じての出会い。私はヴァイオリンソロ曲を7曲作曲し、葉子さんが演奏し、その後も何回かそのプログラムでのコンサートを行ないました。
当時葉子さんはハンガリーのリスト音楽院を卒業後帰国して、ソリストとしての活動の他、オケや講師と大忙し。。そんな中で生まれる音楽のジレンマなど..色々話したっけ。
その後彼女は黒沼ユリ子さんの片腕としてメキシコに渡ったり、国内外様々な場所で演奏をされて...

前に会ったのは早十年位前に私のコンサートに来てくれた時だったから、昨夜は十年振りの再会となったのでした。
演奏会の案内はいつもたくさん頂いていたのに行けず仕舞いだった。
先日、当時のヴァイオリン曲を掘り起こし、ピアノソロへの編曲を進めていた折、今回の演奏会の案内を頂いたので、まるで何かの導きのように出掛けて行ったのでした。

開催するか中止にするか、相当考えた上での演奏会だったと思う。
多くの音楽家の..止むを得ず中止せねばならなかった音楽家も、開催するも空席だらけのホール、または無観客で演奏し、動画配信という演奏家達も、一生懸命音楽を作り上げ、長い長い時間をかけて準備して来たはず。
そう考えると、演奏会の幕が開くだけで胸がいっぱいになり涙が出そうになった。

ドヴォルザーク..正直言ってあまり興味を持って聴いた事が無いくらい、テリトリー外の作曲家...と思いきや、
ピアノ、ヴァイオリン、チェロにソプラノ。
ソロやアンサンブルと、こんなにも美しく素敵な曲を残していたなんて!
あまりの旋律の美しさに、心を奪われる曲達。

前置きが長過ぎたけれど、ここからが本題。
葉子さんのヴァイオリン、最初の一音で世界の空気が変わった!
ホールがチェコの空や樹々のざわめき、風の匂いでいっぱいになった。
慈愛に満ちた囁くような音、かすれるようなすすり泣く音、光輝く弾けるように駆け回る音、烈しく切るように胸をつんざく音.....
音色が色彩で溢れていて、
音楽が...否彼女が音楽となっていた。
15 年前の彼女のヴァイオリンの印象は素晴らしいテクニックと優しく柔らかな音色..といった言った感じでしたが、再会した彼女の演奏はそれに加えて、会わない間に人間これほどまでに深い表現が出来る様になるものなのかと思う位、深く豊かな表現で...。
ドヴォルザークの美しい旋律とともに、目の前いっぱいに情景が広がり、涙が止まらなくなった。

同時に、彼女がどう音楽と向き合っているか、その姿勢に身が引き締まる思いがした。
私は15 年をもっと真っ直ぐに真剣に音楽に対する事が出来たのでは無いか?
自分自身の表現のための研鑽、あんなにも深い演奏が出来るまでに積み重ね続けているもの。
久しぶりの再会で友人が聴かせてくれた音楽にものすごい刺激を貰った。

ー小さな贈り物ー どころか大きな大きな音楽の贈り物を頂いた素晴らしいコンサートでした。
ありがとう....心から🍀

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